◆西洋医学による生理痛の治療法
西洋医学では、子宮などの病気がある器質的問題がある場合と、原因の分からない機能的な問題の二つに分けて、治療を行っていくのですが、ここでは多くの生理痛の患者さんのパターンである、機能的な問題に対する一般的な治療法をご紹介いたします。
《生理痛に対する痛み止めの薬》
まずは他に重大な疾患がなく原因がはっきりしない場合、体を冷やさない、運動をするなどの生活指導に加えて痛み止めを処方する事が多いようです。しかし、鎮痛剤や抗プロスタグランジン製剤はあくまで痛みを一時的に抑える対症療法で、生理痛の原因そのものを治すものではない事に注意する必要があります。
また、副作用が大きいものもあります。(鎮痛剤はほとんど副作用として胃腸粘膜の血流低下を起こします。そのため胃の防御因子の低下から胃潰瘍を起こすので胃薬と併用されています。)
経口か座薬かの違いについては、経口薬の方が手軽ですが、効果としては座薬の方が吸収が早く、より鎮痛作用も強いです。効果の持続時間も長めです。これはなぜかと言うと、経口の場合、肝臓を通ってから全身に流れていきますが、座薬の場合、肝臓を通らないで粘膜を通して直接全身に流れるためです。座薬は静注(血管注射)同様の即効性があるので、かなり効果的です。もちろん胃を荒す心配もありません。(ただしボルタレン座薬には血圧を低下させる作用があるので使用には注意が必要です。)《病院で処方される鎮痛剤》・ロキソニン
ロキソニンはまだ一般薬としては認可されていません。また、生理痛の効能をとってはいませんが、消炎鎮痛下熱剤といてはもっとも一般的に使われています。(市販の鎮痛薬に良く含まれているイブプロフェンについては月経困難症の効能をとっています。)
・ボルタレン
市販の薬で痛みが治まらない場合は、ボルタレンを病院で処方してもらうといいでしょう。ボルタレンは現在処方されている中では一番強い鎮痛剤です。ただし。鎮痛効果が強力なボルタレンやインダシンは経口投与では副作用が強いため、座薬でしか使えません。
・ブスコパン
よく使用される筋弛緩薬にブスコパンがあります。ブスコパンは、アセチルコリンをおさえることで、副交感神経の刺激を弱めます(抗コリン作用)。その結果として子宮の異常な収縮(生理痛の原因はプロスタグランジンの生成による子宮の痙攣ではないかと言われております。)が抑えられ、痛みがやわらぎます。ただしこれは子宮の平滑筋の収縮を一時的に和らげるための対症療法で、生理痛の原因そのものを治すものではないと言う事に注意してください。
《薬局などでよく使用される市販の鎮痛剤》
生理痛に良いのは、基本的にはイブプロフェンという物質が入っているものが効果的です。(プロスタグランジンという生理のときに出る、お腹を痛くさせる物質が作られる事を抑える働きがあります)
炎症性の痛みに対しては、この物質の含まれている薬が使われる事が多いようです。
・ノーシンピュア(アクラス)、バファリンA(ライオン)、ペレタック顆粒(大鵬薬品)、ナロンエース(大正製薬)、ハッキリエースa(小林製薬)、セデス・ハイ(シオノギ)、イブA錠(エスエス製薬)、リングルアイビー(サトウ製薬)
《ピルを服用する》
痛み止めで効果が芳しくない場合に、副作用の比較的少ない低容量のピルの使用を勧められることがあります。ピル(正式には「黄体・卵胞混合ホルモン」)は現在、避妊薬としてのみではなく、生理痛・生理不順・経血の量の治療にも使われています。
排卵を抑制する事により、子宮内膜の増殖を抑え、痛みの原因となるプロスタグランジンというホルモンの分泌が抑えられ、間接的に生理痛が改善されます。しかし保険適応ではない(健康保険が使えるピルは中容量以上になります。)ので、費用が月々3000円~5000円前後かかってしまいます。これは初診料や診察料などは病院の規模によって違いますし、紹介状のある、なしでもかわってきますので問い合わせる必要があります。
また、ピルを飲む前に理解しておかなければならない以下のような注意点があります。
1、ピルを飲んでいても生理のようなものが毎月きますが、それは厳密には生理ではありません。(排卵も起こっていません。)消退出血といいます。
2、個人差はありますが、副作用があります。ピルの服用により体内のホルモン環境が、それまでと異なったものになるため、軽い吐き気、頭痛・偏頭痛・体重増加・食欲増進・倦怠感・静脈血栓塞栓症などに対するリスクの増加などが起こります。(血栓症の発生率はもともと1万人あたり0.5人程度と極めて低いものですが、ピルを服用している女性はピルを服用していない女性と比較するとは欧州で3.53倍、発展途上国では3.25倍との報告があります。)副作用も中容量・高容量と容量が大きくなればなるほどひどく、また起こる人の割合も増えてきます。
3、ピルを飲んでいる間は抗生物質等他の薬との飲み合わせに充分注意が必要になります。また、毎日決まった時間に飲むことが厳守で飲み忘れは厳禁になります。
《生理が3ヶ月以上来ない場合の治療法について》
これを“続発性無月経”と言います。(生まれてから一度も月経のないものを原発性無月経と言います。)急激な体重減少(体重減少性無月経)や強い精神的ストレス(心因性無月経)などのきっかけとなっている変化がみられることがあります。まず、血液検査によるホルモン検査、ホルモン負荷試験などを行い、原因があるのが間脳の視床下部(ししょうかぶ)か、脳下垂体か、卵巣か、子宮かの診断を行います。治療法としては、エストロゲンやプロゲステロンの分泌不全があるため、まずエストロゲン剤を10日程服用してそのあとエストロゲンとプロゲストーゲンの合剤を11日間服用すると数日後に出血が起こり、コントロールする事ができます。その後は低容量のピルを内服するようにしても良いでしょう。場合によっては排卵誘発剤やプロゲストーゲン注射を行う事もあります。